予習と復習はどっちが大事?「反転授業」の考え方で整理する
公開日 更新日 執筆:塾長 馬籠先生
家で予習をした方がいいのか、それとも復習に時間を使うべきか。両方やる時間はないし、どちらを優先すべきかの答えが見つからない。
結論から言うと、目的によって答えが変わります。授業の理解度を上げたいなら予習、定着させたいなら復習です。そして時間が限られているなら、予習を5分だけ入れる方が全体の効率は上がります。
オンライン学習塾マスネットでは、授業前に予習を組み込む「反転授業」の考え方を指導に取り入れています。この記事では、予習と復習の役割の違いと、限られた時間での配分を書きます。
予習と復習は役割が違う
そもそも2つは、目的がまったく違います。
予習の役割は、授業の理解度を上げることです。事前に内容に触れておくと、授業中に「知っている話」と「初めての話」を区別できます。分からない部分が明確な状態で授業を受けられるため、聞くべき場所が分かります。
復習の役割は、記憶に定着させることです。人間の記憶は、学習した直後から急速に失われます。復習しない勉強は、穴の空いたバケツに水を注ぐようなものです。
つまり、どちらが優れているという話ではありません。予習は授業の質を上げ、復習は成果を残す。役割が違うため、比較すること自体が正しくありません。
反転授業という考え方
学校教育の分野で「反転授業」と呼ばれる方法があります。
従来の授業は、教室で新しい内容を教わり、家で問題を解く形でした。反転授業はこれを逆にします。家で新しい内容に触れておき、教室では演習や質問に時間を使うという構造です。
この方法が注目されているのは、「教わる」より「自分で解く」時間の方が学力に直結するからです。説明を聞いている時間は、実は受け身の時間です。手を動かして間違え、直す時間こそが力になります。
家庭学習に置き換えると、次のようになります。予習で内容の輪郭をつかんでおく。授業では、分からない部分の解決と演習に集中する。この形にすると、同じ授業時間から得られるものが変わります。
予習は「5分」でいい
予習と聞くと、教科書を読み込んで問題まで解くイメージを持つかもしれません。しかしそれは必要ありません。
予習の目的は理解することではなく、明日やる内容を知っておくことです。
具体的には、次の3つだけで十分です。
教科書の該当ページを開いて眺める。 見出しと図を見るだけでも構いません。
知らない言葉に印をつける。 分からない用語があれば、そこが授業で聞くべき場所です。
例題を1問だけ見る。 解ける必要はありません。「こういう問題を扱うのか」と分かれば目的は達成です。
所要時間は5分程度です。この5分があるかないかで、翌日の授業の吸収率が変わります。
復習は「タイミング」で決まる
復習は、やり方よりいつやるかで効果が変わります。
効果的なタイミングは4回です。学習直後に軽く振り返り、翌日にもう一度確認し、1週間後に思い出せるかを試し、1か月後に最終確認する。
忘れかけたタイミングで思い出すことで、記憶は強化されます。特に翌日の復習が最も費用対効果が高いタイミングです。
そして復習の方法にも原則があります。読み返すのではなく、思い出すことです。教科書を閉じて内容を言えるか、問題を自力で解けるか。読むだけの復習は、時間をかけても本番で思い出せません。
時間がないときの配分
部活や習い事で、予習も復習も十分にできない生徒は多くいます。その場合の現実的な配分を示します。
まず予習5分を確保します。 これが最も投資効率が高いためです。5分の予習で授業の理解度が上がれば、家での復習に必要な時間が減ります。
次に翌日の復習を10分入れます。 授業でやった内容を、教科書を閉じて思い出せるか確認します。
合計15分です。この15分を毎日続ける方が、週末にまとめて2時間やるより定着します。
優先順位で言えば、予習5分 → 翌日の復習 → 週末の見直しの順です。時間が取れないときほど、予習を切らないでください。
教科別の使い分け
すべての教科で同じ配分にする必要はありません。
数学は予習の効果が特に大きい教科です。積み上げ式のため、授業についていけないと次も分からなくなります。例題を1問見ておくだけで、授業中の理解が変わります。
英語は、新出単語だけ先に見ておくと効果的です。単語が分かる状態で本文の説明を聞くと、内容に集中できます。
理科・社会は復習重視で構いません。暗記中心のため、授業後に思い出す練習をする方が点になります。
国語は、範囲の文章を一度読んでおくと、授業の解説が入りやすくなります。
予習を組み込んだ指導で見えたこと
ここからは、マスネットで実際に見えたことを書きます。
マスネットでは、授業前に一問一答形式の課題を出しています。次回扱う単元の基本事項を、事前に触れておく設計です。反転授業の考え方を、オンライン個別指導に落とし込んだ形になります。
この運用で分かったことがあります。予習をしてきた生徒は、授業中の質問の質が変わります。
予習なしの生徒は「全部分かりません」という状態で授業に入ります。一方、事前に触れておいた生徒は「この式からこの式に変わる部分が分かりません」と、止まっている場所を 具体的に伝えられます。
止まっている場所が特定できると、そこだけを解決すればいいため、同じ60分でも進む量がまったく違います。予習の価値は、内容を先に理解することではなく、分からない場所を先に特定しておくことにあります。
もう一つ、宿題システムの記録から見えたことがあります。予習の課題を出している期間は、復習課題の提出率も上がる傾向がありました。予習で内容に触れているぶん、復習が「知らないことをやる」から「知っていることを確認する」に変わり、心理的なハードルが下がるためだと考えています。
そして、時間配分についてです。マスネットの生徒には、予習は5分でいいと伝えています。長くやろうとすると続かないからです。実際、5分の予習を毎日続けた生徒の方が、週末にまとめて予習した生徒より定期テストの点数が安定しています。
私自身、中学時代はクラスで最下位に近い成績でした。変わったきっかけは長時間の勉強ではなく、授業中に「分かる部分」が増えたことでした。授業が分かると、勉強そのものが苦痛でなくなります。予習5分は、その入口を作る作業だと考えています。
よくある質問
Q. 予習と復習、どちらを優先すべきですか?
時間が限られているなら予習5分を先に確保してください。授業の理解度が上がれば、復習に必要な時間が減ります。ただし定着には復習が必要なため、両方を短時間で組み合わせる形が理想です。
Q. 予習はどれくらいやればいいですか?
5分で十分です。教科書を眺める、知らない言葉に印をつける、例題を1問見る。理解する必要はなく、明日やる内容を知っておくことが目的です。
Q. 反転授業とは何ですか?
家で新しい内容に触れておき、教室では演習や質問に時間を使う授業の形です。「教わる」より「自分で解く」時間を増やすことを目的としています。
Q. 復習はいつやるのが効果的ですか?
学習直後、翌日、1週間後、1か月後の4回が効果的です。特に翌日の復習は費用対効果が高く、最優先で取り入れたいタイミングです。
Q. 全教科で予習と復習をやる時間がありません。
数学と英語を優先してください。積み上げ式のため、つまずきの影響が最も大きい教科です。理科・社会は復習中心で構いません。
Q. 予習をすると授業がつまらなくなりませんか?
予習の目的は理解することではなく、分からない場所を特定することです。5分程度なら内容を先に習得してしまうことはなく、むしろ授業で聞くべき場所が明確になります。
予習と復習のサイクルを作りたい方へ
予習5分と翌日の復習10分。この短時間のサイクルを毎日回すことが、限られた時間で成果を出す方法です。マスネットの中学生コースでは、授業前の予習課題と授業後の復習課題をセットで設計し、サイクルが回る状態を作っています。