不登校の勉強の遅れを取り戻す方法|どこから戻るかの見つけ方と、再開の順番
公開日 更新日 執筆:塾長 馬籠先生
学校に行けていない期間が続くと、勉強の遅れがどんどん膨らんでいくように感じます。何から手をつければいいのか分からないまま、時間だけが過ぎていく感覚は、本人にとっても保護者にとってもつらいものです。
結論から言うと、遅れを取り戻す鍵は「今の学年の内容をやること」ではなく「つまずいた地点まで戻ること」です。特に数学と英語は積み上げ式なので、土台を飛ばして先に進んでも理解できません。
オンライン学習塾マスネットでは、学校に行けていない期間があった生徒の学習再開にも対応しています。この記事では、戻る地点の見つけ方と、再開の具体的な順番を書きます。
その前に:勉強より優先することがある
方法の話に入る前に、ひとつだけ確認させてください。
心身の状態が整っていない時期に勉強を始めても、続きません。それどころか「またできなかった」という経験が積み重なり、次に動き出すハードルを上げてしまいます。
生活リズムが戻ってきた。少し外に出られるようになった。「そろそろ何かやってみようかな」と本人の口から出た。こうした兆しが見えてからで十分です。焦って始めるより、始められる状態になってから始める方が、結果的に早く進みます。
学習の遅れは、後から取り戻せます。これは実際に多くの生徒が証明していることです。
遅れを取り戻す4つのステップ
ステップ1:教科に優先順位をつける
すべての教科を同時に取り戻そうとすると、必ず途中で潰れます。優先順位は明確です。
最優先は数学と英語です。この2教科は前の学年の内容が土台になるため、空白があると先に進めません。しかも後から取り戻すのに最も時間がかかります。
理科と社会は後回しで構いません。単元ごとに独立しているため、必要になった時点で範囲を絞って覚え直せます。受験期に集中して取り組んでも間に合う教科です。
国語は、漢字と語句だけ先に押さえておくと後が楽になります。読解力は短期で変わるものではないため、長期的に育てる位置づけです。
ステップ2:つまずいた地点を特定する
ここが最も重要で、最も難しい部分です。
やり方はシンプルで、簡単な問題から順に解いていき、「解ける」と「解けない」の境目を探します。中2の内容が分からないなら中1の問題を、それも怪しいなら小学校の内容まで戻ります。
「中3なのに中1に戻るなんて」と感じるかもしれませんが、これは遠回りではありません。土台が固まると、その上の単元を理解する速度が上がります。飛ばして進むより確実に早く追いつけます。
数学なら、分数・小数の計算、正負の数、文字式、方程式の順に確認していくと境目が見つかります。英語なら、be動詞と一般動詞の区別、時制、基本文型あたりが典型的なつまずき地点です。
ステップ3:1日15分から再開する
再開直後に量を増やすと、ほぼ確実に止まります。
最初の数週間は1日15分で十分です。目標は「進むこと」ではなく「毎日ゼロにしないこと」。学習量を増やすのは、毎日続く感覚が戻ってきてからです。
時間を決めることも重要です。「気が向いたときにやる」では続きません。「毎日この時間にやる」と固定した方が、意志の力に頼らずに済みます。
ステップ4:全範囲ではなく「必要な範囲」に絞る
空白期間の全部を埋めようとする必要はありません。
高校受験を考えているなら、入試の頻出分野に絞ります。入試問題の多くは中1・中2の範囲から出るため、そこを優先します。逆に、出題頻度の低い単元は後回しでも困りません。
「全部やらなければ」という前提を外すことが、実は最も効果のある一手です。
一人で進めるときにつまずきやすい点
自宅学習で進める場合、次の3つが壁になります。
どこまで戻るかの判断。自分では「分かっているつもり」の部分が抜けていることが多く、正確な境目を自分で見つけるのは困難です。
解説を読んでも分からない問題への対処。ここで止まると、その日の学習が終わってしまい、翌日以降のハードルが上がります。
進んでいる実感が得られない。学校のように定期テストや周囲との比較がないため、自分がどれくらい進んだのかが見えにくくなります。
これらは能力の問題ではなく、環境の問題です。仕組みで解決できます。
学習再開の現場で見えたこと
ここからは、マスネットで実際に見えたことを書きます。
学習を再開した生徒の記録を追っていると、続く生徒と止まる生徒の差は、最初の2週間の量で決まることがはっきり分かります。
宿題システムの提出履歴を見ると、再開直後に「頑張ろう」と量を多めに設定した生徒ほど、3週目あたりで提出が途切れます。逆に、1日15分程度から始めた生徒は、2ヶ月後には自然と学習量が増えています。3ヶ月時点で比較すると、後者の方が総学習量で上回っているケースがほとんどです。
もう一つ、オンライン自習室の稼働データから分かったことがあります。入室する時間帯が固定されている生徒ほど、学習が続いています。逆に、その日の気分で入室時間がばらつく生徒は、数週間で入室自体が途切れる傾向がありました。
学校という外部のペースメーカーがない状態では、この「時間の固定」が学習継続の生命線になります。マスネットの毎日管理コースで21時にLINEでその日のTODOを通知し、翌日正午までに未完了なら再アラートを出しているのも、この理由からです。自分で管理できないことを責めるより、外側にリズムを置く方が現実的だと考えています。
そして、戻る地点についてです。指導していて感じるのは、保護者が想像しているより深い地点につまずきがあるケースが多いことです。中3の生徒が中1の方程式でつまずいていた、中2の生徒が小学校の分数で止まっていた。こうした例は珍しくありません。
ただ、深い地点から始めた生徒ほど、その後の伸びが早い傾向もあります。土台が固まった状態で進むと、理解の速度が変わるためです。実際に、基礎から積み直して数学が30点台から80点台まで伸びた生徒もいます。戻ることは後退ではありません。
よくある質問
Q. 何ヶ月くらいで遅れを取り戻せますか?
空白期間の長さとつまずきの深さによります。ただし全範囲を埋める必要はなく、教科を絞り、必要な範囲に限定すれば想像より短期間で追いつけることが多いです。まず現在地の把握から始めてください。
Q. 何年も前の内容まで戻るべきですか?
つまずきがそこにあるなら戻るべきです。土台が固まると上の単元の理解速度が上がるため、結果的に早く追いつけます。学年を気にする必要はありません。
Q. どの教科から始めればいいですか?
数学と英語です。積み上げ式で、後から取り戻すのに最も時間がかかる教科だからです。理科と社会は範囲を絞って後から取り組めます。
Q. 1日どれくらい勉強すればいいですか?
再開直後は1日15分で十分です。毎日ゼロにしないことが目標で、量を増やすのは続く感覚が戻ってからにしてください。
Q. 本人にやる気が見えません。
心身の状態が整っていない時期かもしれません。無理に始めても続かず、次に動き出すハードルが上がります。生活リズムが戻り、本人から前向きな言葉が出てからで間に合います。
Q. 学校の授業に追いつく必要はありますか?
必ずしもありません。目標が高校受験なら、入試の頻出分野に絞る方が効率的です。学校の進度と同じことをやる必要はありません。
学習の再開を具体的に設計したい方へ
つまずいた地点の特定と、そこからの再開の設計は、一人で進めるのが最も難しい部分です。マスネットでは、現在地の診断、戻る範囲の設定、無理のない量からの再開まで、一人ひとりの状況に合わせて伴走しています。
不登校からの高校受験の全体像は、次のガイドにまとめています。
※心身の不調が続いている場合は、学習より先に、スクールカウンセラーや医療機関などの専門的な支援をご検討ください。